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気管支拡張症の予防・経過

気管支拡張症を引き起こす原因疾患を早期に特定し、治療することは、気管支拡張症への進展を予防し、重症化を防ぎます。小児では、気管支拡張症の半数以上で正確な診断が下され、早急に治療が行われています。

幼児期のはしか(麻疹)や百日ぜきへのワクチンの接種、抗生物質の適切な使用、生活環境や栄養状態の改善などによって気管支拡張症になる人の数は著しく減少しました。年1回のインフルエンザワクチンの接種、肺炎球菌ワクチンの接種、肺炎や結核などの感染症にかかってすぐの適切な薬剤の使用などは気管支拡張症の進展を予防し、重症化を防ぎます。

免疫グロブリン欠損症の患者への免疫グロブリンの投与は、再感染を予防します。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の患者は、コルチコステロイド薬や抗真菌薬のイトラコナゾールなどの服用で、気管支拡張症を生じる気管支の損傷を抑えることができます。

有害な蒸気やガス、煙、粉塵を吸いこまないようにすることも気管支拡張症の進展を予防し、重症化を防ぎます。子供が気道内に異物を吸いこんでしまうことも、子供が口に何を入れたか注意深く見ていれば予防できます。

さらに、薬物や酒による過剰な鎮静状態を避け、意識障害などの神経症状や、食べものを飲みこめない、吐き出す、食後にせきが出るといった胃腸症状がみられる場合に医師の診察を受ければ、異物を吸いこむことは予防できます。また、石油などの油類は、肺の中へ吸いこんでしまうおそれがあるので、少量であっても口や鼻の近くに置かないようにします。

気管支の閉塞部分を特定し、治療するためには、損傷がひどくなる前に気管支鏡検査を行います。まれに、肺の一部を手術で除去することもあります。この手術は、気管支拡張症が肺の片方、または1つの肺葉や1つの肺区域に確認された場合のみに行われます。手術は、治療をしても再感染を起こす患者や、多量の喀血がみられる患者などにも考慮されます。

出血を起こしている気管支の血管を人工的にふさぐ、気管支動脈塞栓術と呼ばれる方法もあります。血液中の酸素濃度が低下している場合、酸素吸入療法を行って肺性心などの合併症を予防します。肺の移植は、進行した気管支拡張症の患者に行われますが、患者のほとんどで嚢胞性線維症も進行しています。

心臓と肺、または両方の肺を移植した場合の5年生存率は、65~75%と報告されています。肺が取りこむことができる空気の量および1回の呼吸で肺が出し入れできる空気の量と速さなどによって測定される肺機能は、普通は6カ月以内に改善し、少なくとも5年間は改善した状態が続きます。